イスラエルと聞いてあなたはどんなイメージを持つだろうか?
治安が悪そう?テロあるから危ない?
イスラエルは中東のシリコンバレーと呼ばれるほど多くのスタートアップがひしめくIT先進国です。
そんなイスラエルに移住して、現在は現地のスタートアップで働きながらインスタグラマーとしても活動されてるズッカさんに、
イスラエルの働き方やライフスタイルについてお話を聞いてみました。
Zucca
1992年生まれ。イスラエルと日本のハーフ。
イギリス生まれたのちに家族でイスラエルに移る。小学校から大学まで日本で過ごし、大学卒業後にイスラエルの貿易関連の会社に就職。
現在はスタートアップで、データ分析、英日翻訳を行なっていて、
最近ではAIのエラーを修正する人工知能の修正サポートや他社でもリモートワークをするなど多岐にわたって活躍してる。
2018年の1月には東京でイスラエルの文化を広めるイスラエル女子会にスピーカーとして登壇。
インスタグラムのフォロワーは1600人を超え、ズッカさんのフィルターを通してイスラエルのライフスタイルを発信している。
ズッカさんがイスラエルに渡ったのは大学卒業後の2016年7月のこと、所持金10万円を握りしめイスラエルに渡航。
もともと日本帰るつもりでいたが、
「もしかしたら、イスラエルで働けるかも …?ちょっと仕事探してみよう。」
そんな思いつきで仕事を探したところ幸運も重なり貿易関連の会社に就職し、それがきっかけで今のイスラエルでの生活がスタートしたという。
そんなズッカさんのストーリーを見ていこう。
日本の就活スタイルはどこか自分には合わないと感じていた。
——現在はイスラエルのスタートアップで働かれているとのことですが、日本では就職せずイスラエルで就職することを決めた理由はなんでなんですか?
ズッカさん : 日本の就活システムが自分の肌には合わないと感じてしまったからです。
スーツは黒じゃなきゃいけないとか、コートは面接を受ける会社のビルの前で脱ぐとか、面接するときも、「座ってください」と言われるまで座っちゃダメとか。
色々ありますよね。
「日本ではいかに自分がフィットできるか?」という部分にものすごく労力を使っていてるような気がしたんです。
——確かに就活では「就活の正解」を求められますよね。
もちろん社会で生きていくわけだから礼儀とかマナーは大切なのは分かります。
でも自分のスキルとか、実力とかは二の次で自分がフィットすることが大事な社会なら自分には合わないかもって思っちゃったんです。
テルアビブ大学に1セメスター留学して感じた日本の外の世界観とイスラエルへの憧れ。
——なるほど。それで日本の就活システムが肌に合わないと感じて日本での就活はやめて、イスラエルでの就職を決めたと。
ズッカさん : 最初からイスラエルで働くと決めていたわけではないんです。
大学4年生の時に1年休学してテルアビブ大学に留学していたんですけど、その経験はやっぱり大きかったかなと思います。
幼稚園の年少まではイスラエルにいたんですけど物心着いてからは日本で生活していたので、初めて海外生活だったんです。
で、実際に大学で授業を受けたり、いろんな人と寮で生活してみると日本とは全然違うんだなって。
2014年の7月から2015年の1月までの1セメスターだけの留学だったんですけど、日本に帰った後も、
もう一回イスラエル行きたいなってずっと思ってて。
大学最後の夏休みはみんな就活を始めていたんですけど、私はまたイスラエルに戻ってヘブライ語の語学学校に通ってました。(笑)
“イスラエル人としてのアイデンティティも育てたい”そんな思いもあった。
ズッカさん : あとは日本で就職しようか迷ってる時に思ったのが、自分は半分イスラエル人だし日本側じゃなくてイスラエル側のアイデンティティも伸ばしたいなって。
——イスラエル人側のアイデンティティも伸ばしたいなと感じたキッカケは何ですか?ふと思ったという感じ?
ズッカさん : 私はイスラエルと日本のハーフですけど日本で育ったのでアイデンティティ的には日本人なんです。
でも”ハーフ”ということで日本人として受け入れてもらえないってこともあったりして。
だからハーフならではの苦悩があった時期もありました。
そういう経験もしたのでイスラエルに行って自分のイスラエル側のアイデンティティを育てらたら、もっと生きやすくなるんじゃないかなって。
イスラエルで偶然掴んだ仕事のチャンス!
——なるほど。テルアビブ大学への留学や自分のアイデンティティとも向き合った結果、日本では就職しないと決められたわけですが、イスラエルでの仕事はどうやって見つけたんですか?
ズッカさん : それは運もあって、最初は在外公館派遣員という制度があってそれに応募したんです。
——在外公館派遣員??初めて聞きました。
ズッカさん : 便宣供与(べんぎきょうよ)と言って外務省職員などが出張でその国にきた際の空港送迎や会議室の手配など、小さなお仕事をするポジションがあるんですけど、「あ、なんかこれ面白そうだな」って思って。
ずっとIT業界に興味があったのですが、募集公館リストの中に電子国家で有名なエストニアがあって応募したんです。
——なるほど。エストニアは独自の仮想通貨である「エストコイン」の発行を示唆したことでも話題になってましたよね。
ズッカさん : はい。イスラエルも興味はあったんですけど、当時は電子国家として大きく期待されているエストニアを見てみたいと思ったんです。
でも結局落ちちゃって。
その在外公館派遣員の試験が年に2回あるんですけど次の試験まで時間があったので、当時お付き合いをしていたイスラエル人の彼氏に会いにイスラエルに行ったんです。
10万円を握りしめて向かったイスラエルが運命を変えた。
ズッカさん : 当時は貯金が10万円くらいしかなかったんですけど、まあ、2ヶ月くらいは生活できるだろうと思って…とりあえずいきました。(笑)
で、向こうで暮らし始めて1ヶ月くらい経って、ある日ふと思ったんですよね。
「あ、ちょっと仕事探したら見つかるのかな?」って。
で、そこから1週間死ぬ気で仕事を探してみたんです。そしたら運よく最初に働いた貿易会社が雇ってくれて。
——すごい。(笑)
ズッカさん : 仕事が正式に決まったのも帰国する1週間前くらいで、その時は日本に帰るつもりでいたので帰りのチケットも取ってたんですよ。(笑)
なんとイスラエルで働くきっかけを掴んだのはイスラエルについてから。ズッカさんのその行動力に脱帽だし、とりあえず動いてみるって何事でも大事なことだなと改めて感じた。
イスラエルでは残業ナシ、有給も確実に取れる”ライフスタイル”の中に”ワーク”がある働き方。
——ここからはイスラエルの働き方についてお聞きしたいんですけど、日本では長時間労働やサービス残業、有給が取れないなど働き方の問題も多く取り上げられてますが、イスラエルではどうですか?
ズッカさん : イスラエルでは今の所2社経験して、あと1社リモートワークで働いているんですけど。
まず絶対に帰れます。
前の貿易会社は17時になった瞬間に帰っていい。別に上司が残っていようが誰が残っていようが帰れます。
今のスタートアップは10時から18時で7時間とかしか働いてないんですけど、絶対に帰れる(笑)
——スタートアップってかなり忙しいイメージなんですけど。意外とそうでもないんですね。
ズッカさん :でもハッカソンがあるときは結構忙しいです。
——ハッカソン?(笑)
ズッカさん : ハッキング(hacking)とマラソン(marathon)をかけた言葉なんですけど、「今日はハッカソンやるぞ!」ってなったら10時から次の日の10時までひたすらコーディングをするっていう…(笑)
——…徹夜して仕事するわけですね。
ズッカさん : ただ私はディベロッパーじゃないので毎日コーディングしてるわけじゃなくて、うちの会社はいい意味でもスタートアップっぽくはないので、仮にハッカソンをやるとしても22時ぐらいには帰ります。
頻度にも3ヶ月に1回くらいなのでそんなにキツないし、普通の日はどんなに夜遅くまで残っていてても20時までにはみんな絶対帰りますね。
例えば次の日上司に「昨日何時まで仕事してたの?」って聞かれて「21時まで仕事してました!」って言ったら、
「えーーーーー!!」みたいな(笑)
「早く帰りなよ!!!」ってめっちゃ言われますよ(笑)
イスラエル全体がそうとは言えないかもしれないけど、前の貿易会社も定時に帰ってそのあと語学学校に通ってましたから、「残業はしない、帰っていい、有給はちゃんと取る」っていうのがスタンダードかもしれないです。
——有給はどうですか?
ズッカさん : 有給は全部消化できます。
うちの会社は15日有給が取れて、さらにもっと休みたい場合はお給料はでないけど、さらに15日休みが取れるようになってます。
——じゃあ1ヶ月間丸々はバケーションとかいけちゃうわけですね。
はい。私はクリスマス前から3週間ほどバケーションをとって、日本に帰国して地元の友達と会ったり京都や大阪にも観光に行きました。
その時にイスラエル女子会の講演会にスピーカーとしても登壇させてもらいましたし、濃いバケーションになったと思います。
日本と一番異なるのは上司に意見をしないと評価につながらないこと。
——ズッカさんは2社経験されてるわけですが、「イスラエルの企業は日本と違ってこんなところが大変!」っていうところがあったら教えてください。
ズッカさん : イスラエルでは上司に意見をしないと評価に繋がらないです。
——それは面白いですね。
例えば「今週はこんな感じでタスクやっていきます。」ってミーティングで決まったとするじゃないですか。
そこで「はい、わかりました。」っていうと仕事ができない人間だと思われるんです。
「最初は上司にわからないことある?」って聞かれても「ないです!大丈夫です!」みたいな感じだったんですけど、なんか上司の反応がおかしいなと思って。
ミーティングとかでも、
「いや、これはもっとこうしたほうがいいと思います」
「こういうタスクの流れだと終わらないんで先こっちやっていいですか?」
みたいにどんどん自分の意見を言ってコミュニケーションをとった方が評価が高くなるイメージがあります。
——なるほど。疑問を持つこと、質問をすること、思考停止にならないこと。全部ビジネスに必要な要素ですね。
イスラエルの人たちは同僚というより友達になりたがる(笑)
ズッカさん : あとはイスラエルの人は助け合う文化が強いから友達になりたがるんですよね。(笑)
これはどこもそうかわからないんですけど、日本だとビジネスライクというか、プライベートと仕事の関係って結構メリハリがついてるお思うんです。
でもイスラエルの人たちはプライベートも共有したいという思いが強いなと感じます。これはスタートアップの特徴かもしれないですけど。
——なるほど。日本だと仕事ではプライベートなことまでは共有しないことが多いですが、そこは日本と大きく異なる文化かもしれません。
ズッカさん : 前に「歯医者さん行ってきたから歯がめっちゃ痛いんだよ〜」って話をしたら、「え!?歯医者行ったの??そんなの知らなかった!!なんで教えてくれなかったの!?」みたいに言われて、
そんな細かいことも言った方がいいの!?みたいな感じだったんです(笑)
だから、「自分のプライベートをもっと共有したほうがいいのかな〜」って思うことがあります。
あとこれはイスラエル国民性なんですけど、感情豊かなんですよね。前の会社もそうだったんですけど、仕事とプライベートの切り替えができない人が多いんですよ。(笑)
前に上司が旦那さんと喧嘩して来たことがあって、その時のオーラがやばかったんです。
絶対話しかけられないじゃん…めっちゃ機嫌悪いし…みたいな。(笑)
出典 : https://hbr.org/2015/12/getting-to-si-ja-oui-hai-and-da
ちょっと調べてみたらこんな図を発見した。これは各国のビジネスのマインドを表した図だが、
上に行くほど感情的で、下に行くほど感情は見せない。
左に行くほど本音で話し、右に行くほど衝突を避けるために本音を出さない。
この図が表している通り仕事に対するマインドでは日本とイスラエルでは真逆だということが判明した。
イスラエルで就職を考えている方はこのあたりを理解してあげるとスムーズにコミュニケーションが取れるかもしれない。
イスラエルのスタートアップが力を入れているのは社員のスキルアップだった。
ズッカさんは現在会社からの指示でソーシャルメディアマーケティングの学校で通われていて、インスタやフェイスブックを使ったマーケティングを学ばれているとのことなのでそちらの話も聞いてみた。
——ズッカさんは今ソーシャルメディアマーケティングの学校にも通われてるとのことですが、それについて教えてください。
ズッカさん : 期間は 5月末から11月までの半年間で、毎週日曜日の18時から21時までレクチャーを受けています。
(イスラエルは金曜日と土曜日が休日なので日曜日の仕事終終わりに行かれてるとのこと。)
——学校ではどんなことされてるんですか?
インスタ、ツイッター、フェイスブック、リンクトインがメインなんですが、SNSを使って、個人や企業が効果的に集客するにはどうすればいいかを学んでいます。
今まだ始まったばっかりなのでセオリーが多いんですけど、コースの後半では学校が提供してくれる資金を使ってインスタとか、フェイスブックに実際に広告を出して集客してみるってこともできるみたいです。
——ええ!!それめっちゃ面白そう!!というより、ソーシャルメディアマーケティングを学べる学校があることがビックリです。イスラエルでは会社がお金を払って学校に通わせたりすることってよくあることなんですか?
ズッカさん : 結構ありますよ。
今回のソーシャルメディアマーケティングの学校も上司がたまたま見つけて、「これいいんじゃない?行ってみれば?」って言ってくれて。
あとはうちのチームリーダーもチームリーダー理論を週1回のカウンセリングでみっちり受けていて、人事の人もHRの講座を受けてます。
だから結構人に投資してくれてるなって思います。
ソーシャルメディアマーケティングの学校があることにも驚きましたが、スキルアップのために会社がしっかりと社員の成長に投資をしている点、日本の企業もそういう視点が必要なのではと感じた。
イスラエルでスキルを磨いてもっとレベルアップしたい!
——自分のルーツでもあるイスラエルに移住したわけですが、将来のことについてお話聞かせてください。
ズッカさん : 一生イスラエルに住むことは、ないんじゃないかなと考えてます。
——ええ!?そなんですか!?
ズッカさん : なんとなくそんな気がします。ただイスラエルは私のルーツですし、まだまだ学び足りないと思っているのでこの国でもっと多くのことを経験したいです。
他国のスタートアップ界隈の動向も常にチェックしているのでもっとスキルを磨いて、いつか他国でも勝負できるような人間になれたらいいなと思っています。
ズッカさんから海外で働きたいと思っている人たちへのメッセージ。
——最後にズッカさんのように海外で働いてみたいと考えている人たちへ何かメッセージをお願いします。
ズッカさん : ちょっと無責任に聞こえちゃうかもしれないんですけど、女の子でも男の子でも本当に海外で働こうと思ったらできることなんで、とりあえず飛び込んでみるってやっぱり大事だなって思ってて。
——そうですね。僕もオーストラリアに留学していた経験があるのでその気持ちがよくわかるのですが、長期で海外に行くって最初はすごく恐いんですよね。でも、その一歩を踏み出さないと見えない世界もあると僕も思ってます。
ズッカさん : もし、日本の環境でちょっと自分に合わなって思うことがあるなら日本でくすぶってるんじゃなくて、ちょっと外に目を向けたら色々あるんだよって。
「外の世界ってめっちゃ広いんだよ〜〜!!」って私は今いろんな人に言ってます。
というわけで、ズッカさんに色々を話を聞きました!
僕がすごいなと思ったのはイスラエルの会社は人に投資することを重要視している点。
マネージャーやHRなどそのポジションにあったスキルを身につけるための講座や学校に通わせてくれるって、なかなか日本じゃできないことなのかなと感じました。
あとはソーシャルメディアマーケティングを学べる学校があることもビックリ。しかも学校からお金が出てそのお金で広告出して実際に集客を勉強できるって面白すぎる・・・
さすがITの国イスラエル!!
ズッカさん今回は楽しい時間をありがとうございました!
今日はイスラエルでの働き方についてお聞きしましたが、ズッカさんはインスタグラマーとしても活動されていて現在注目のインスタグラマーです。
わずか90投稿で1600人以上のフォロワーを集めるとは簡単にできることではないですし、今後ますますご活躍されるので是非ズッカさんのインスタグラムもチェックしてみて下さいね!
後編ではライフスタイル編としてズッカさんオススメのレストランやテルアビブ、エルサレムなどの観光スポットについてご紹介いただきます。
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ズッカさんのインスタグラム : @Zucca_chan
ズッカさんのTwitter : @zucca_chan
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